コートハウスという言葉、あまり聞き馴染みがない方も多いかもしれませんが、間取りの中に中庭やパティオを取り入れた家のことを指します。家づくりを検討しているなら、コートハウスはぜひ知っておきたい建築用語。そこで、コートハウスではどんな暮らしが楽しめるのか、また家づくりで注意すべきことなどをご紹介します。
目次
コートハウスとは、そもそもどんな家?
一般的に、庭は塀の内側にあるものではありますが、通りからは比較的オープンになっている場合がほとんど。最近は、あえて塀を設けないお宅や、植栽などでナチュラルに目隠しをするお宅も多いですね。高い塀を作らないことで、日差しを室内まで届けることができます。
一方でコートハウスは、中庭を高い塀や建物で囲むことでプライバシーをしっかり保ちながらも、上からの日差しを室内にうまく取り込むように設計された家のこと。コートハウスはそもそも、ギリシャやイスラム圏の国々、そしてヨーロッパの都市部などで、昔からよく見られる住宅スタイルです。日本では、京都の町屋もこのスタイルを取り入れた住宅といわれています。
コートハウスの大きな特徴は、建物の外側は開口部を最小限に抑え、中庭に面して大きな開口部を設けるように設計されているところ。こうすることで、限られた敷地でも室内に光と風を取り込むことができ、住宅が密集している地域でも快適に暮らすことができます。
コートハウスの特徴的な間取りとは
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“中庭がある家”と聞くと、建物の中央に中庭やパティオがあり、そのまわりを回廊式に建物が囲んでいる家をイメージしませんか?しかし、コートハウスの間取りはいくつかのパターンにわけられ、敷地の形や光の当たる方角、またどんな使い方をするかによって選ぶことができます。
<コートハウスの間取り例 その1>
ロの字型
中庭を建物がぐるりと囲むように作られているのが、ロの字型のコートハウス。中庭が完全に建物に囲まれているため、近隣の家や通りから完全に視線を遮断することができ、プラバシーがしっかり守られるメリットがあります。また、中庭の四方すべてが居住スペースと接しているため、上部からの陽光を各部屋に取り入れることも。中庭を使って、各部屋へのアクセスをすることもでき、中庭が家族の共有スペースとして活用できます。さらに、外部と全く接していないので、夏は窓を開けっ放しにしておくこともできます。
ロの字型のコートハウスは、建物が中庭を囲むことで、ある程度の敷地面積が必要になります。また、建物の角や開口部が多くなる傾向があるので、建築費用が多くかかってしまう場合が多いでしょう。
<コートハウスの間取り その2>
コの字型
コの字型のコートハウスは、3つの面が建物に囲まれている間取り。三方向を建物に囲まれているため、外からの視線をある程度は遮断でき、ロの字型の間取りよりも風通しや陽光を取り入れやすいなどのメリットがあります。
一階部分にコの字型の中庭を作り、外庭に繋げることで、開放感がありながらも、プライベートな中庭と外庭を上手に使い分けることもできます。コの字型の場合は、広い敷地がなくても作ることができるのもメリットです。
<コートハウスの間取り その3>
L字型
四角い建物の一つのコーナー部分が中庭になっているのが、L字型のコートハウス。建物に囲まれている部分がほかの間取りに比べて少ないため、外からの視線には注意をする必要がありますが、その分、風通しや日当たりはしっかり確保できます。さらに、室内から窓の外を見たときの開放感も格別。また、敷地の広さに関係なく作ることができ、建築費用も抑えることができます。
ただし、どの位置に中庭を設けるのかによって、日の入り方が変わってきます。時間帯によって、どの時間に日当たりがいいかなどをしっかり検討する必要があります。
<コートハウスの間取り その4>
小さな坪庭風
室内に採光を確保するのが目的で、小さな坪庭風の中庭を設けることもあります。ほんの1〜2畳ほどのスペースでも、上からの日差しを有効に取り入れることができます。小さな中庭の場合は、外に出るのが目的ではないので、シンボルツリーやグリーンを植えて楽しむお宅も多いでしょう。そうすることで、視覚的に癒されたり、インテリアとしての効果もあります。
コートハウスのメリットとデメリットとは
コートハウスの家を建てるということは、およそ、ひと部屋分の居住スペースを使って中庭を作ることになります。もちろん、メリットだけを考えれば、ワクワクするような素敵な暮らしを送ることができそうですが、そこにはデメリットがあることも忘れずに。そこで、コートハウスのメリットとデメリットを知っておきましょう。
<コートハウスのメリット>
・外空間でありながら、プラベートな時間が楽しめる
・中庭に向かって開口を設けることで、室内が明るくなる
・気兼ねなく窓をオープンにできて、風通しを確保
・アウトドアリビングとして、さまざまな活用ができる
・防犯面でも安心できる
・洗濯物を干すのも、近所の目が気にならない
・子どもを安心して遊ばせることができる
<コートハウスのデメリット>
・建物の形が複雑になり、建築費用がかかってしまう可能性がある
・中庭を設ける分、居住面積が狭くなってしまう
・中庭に面して開口部が多くなると、室内の断熱性が下がってしまう
・中庭も掃除や手入れ、メンテナンスが必要になる
・外に向かっての開放感がないので、景色があまり楽しめない
コートハウスを検討すべき、住宅環境とは?
都心部の住宅密集地では、敷地にも限りがあり、外に向けて大きな開口部を取ることが難しいもの。そんな住環境の中でも、採光や風通しをしっかり確保して快適に暮らすために、中庭のあるコートハウスを検討するご家庭も多いでしょう。
また、新興住宅地で家を建てる場合にも、コートハウスはおすすめです。両隣や向かいの土地にまだ建物が建っていない場合、周囲にどんな家が建つのかはもちろん分かりません。庭をオープンにして、後から建った家と視線がバッティングするのは、できるだけ避けたいところ。
そんな時に、中庭を持つコートハウスであれば、壁や建物で囲まれているので、周囲の環境に左右されることはありません。そういった意味でも、コートハウスは住宅密集地や新興住宅地などで、注目されるべき間取りなのです。
素敵なコートハウスを建てるなら、実績のある設計会社を
コートハウスを設計する場合は、敷地の特性をしっかり把握する必要があります。中庭を設ける大きな目的は、光と風を室内に効果的に取り込むこと。ですから、設計をはじめる前には、その土地の日当たりや通風を時間帯ごとに確認することが重要になります。
また、周囲の建物との関係性も間取りやデザインに大きく影響します。プライバシーを重視しているのが中庭のメリットですから、設計ではその点をしっかり配慮してもらいましょう。家づくりをはじめる前には、設計会社やハウスメーカーの担当者の方と一緒に、土地の様子を現地に行って確認することが大切です。
このように、丁寧に現地の視察をすることは、コートハウスを失敗せずに建築するための大きな条件。そのためにも、コートハウスの建築実績が多い設計会社やハウスメーカーを選ぶようにしましょう。
コートハウスづくりの際に、設計会社に伝えるべき3つのこと
1. 中庭をどの階に設けるのかを決める
間取りを考える際には、まずは1階リビングにするのか、2階リビングにするのかを考えます。それによって、中庭を設ける階が自然と決まってくるでしょう。1階リビングであれば、床部分を芝生にして庭のように使うこともできますし、スタイルによっては外庭とつなげることも。2階リビングであれば、フローリングと中庭の床を統一することで、リビングの延長として使うことができます。
2. 家のどこに中庭を設けるのか決める
次に、中庭を家のどこに配置するのかを考えます。コートハウスの家づくりでは、中庭を中心に間取りを考えていくのが基本になります。というのも、中庭が室内の採光に大きく関わってくるからです。コートハウスの間取りは、大きく分けてロの字型、コの字型、L字型とありますので、まずはそこから決めていくことになります。
3. 中庭でどんなことをしたいのかを伝える
中庭でどんな過ごし方や楽しみ方をしたいのかを伝えます。これは、中庭の広さや位置、床の素材などにも関わってきますので、できれば具体的に伝えられるとベストです。また、使い方によっては、中庭に水道設備を設けることも検討します。
コートハウスは、周囲からの視線を気にせずに、家族だけのプライベートな時間を外空間で楽しむことができる家。とくに、都心部の住宅密集地では、このような間取りのアイデアが有効です。ただし、家に中庭を作る場合は、敷地の大きさや周囲の環境などに配慮する必要があることも覚えておきましょう。家づくりの基礎知識として、このようなアイデアがあることを知っておくと、家づくりの幅が広がります。
文/内田あり