爽やかな風が通り抜ける、コートハウスの暮らし。うまく活用するための間取りとは?

コートハウスは、間取りに中庭を設けて、暮らしの中で上手に活用している住宅スタイルのこと。中庭と聞くと、広い敷地が必要なのではと思われるかもしれませんが、実は都市部の住宅密集地でこそ、その魅力を最大限に発揮できるのです。そこで、コートハウスのメリットやデメリット、中庭のある間取りの選び方のコツをご紹介します。

 

 

コートハウスとは、中庭を楽しむための家


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コートハウスとは、建物や壁でぐるりと囲まれた、中庭やパティオがある住宅のこと。建物の外側は開口部を最小限に抑え、内側の中庭に面して大きな開口部を設けるのが、コートハウスの大きな特徴です。

このコートハウスは、ヨーロッパの都市でよく見られる住宅スタイル。建物内部に中庭を設けることで、限られた敷地でも室内に風と陽光を取り込むことができ、住宅が密集している地域でも快適に暮らすことができます。京都の町屋も、このスタイルを取り入れた形だと言われています。

間取りの中で、中庭をどの位置にするかによって、コートハウスとしての役割や外観のデザインもだいぶ変わってきます。どんな使い方をしたいのか、またメリットやデメリットを考慮しながら、間取りを考えてみましょう。

 

日当たりとプライバシーが確保できるコートハウス

コートハウスには、さまざまなメリットがあります。コートハウスの家づくりを検討する際には、メリットとデメリットを事前に知っておきましょう。

 

<コートハウスのメリット1>
周囲の視線を気にせず、アウトリビングが楽しめる!

コートハウスの最大のメリットは、周囲からの視線を遮断しながら、屋外の空間を家の中に持つことができることです。建物や壁に囲まれた中庭では、テーブルとイスを出して食事をしたり、そこで昼寝をしたり、ヨガやストレッチをしたりと、さまざまな使い方ができます。通りに面した庭やデッキではできないことが、建物や壁に囲まれたプライベートな中庭では、気兼ねなく楽しむことができるのです。


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また、ウッドデッキ仕上げの中庭にすれば、室内からの延長のように使えて、アウトリビングとして活用できます。お天気のいい日であれば、窓を大きく開け放って、広い空間でホームパーティーも楽しめます。中庭に高めの壁を設けることで、プライバシーをしっかり守りながら、風通しのよい開放的な空間になりますね。

 

 

<コートハウスのメリット2>
風通しや日当たりをしっかり確保できる!

敷地の方角や周囲の住宅との位置関係、周辺環境によって、日当たりが確保しづらいことがあります。日当たりを確保しようとすれば、どうしても開口部を大きくする必要があり、そうなると周囲からの視線をしっかり遮断することが難しくなります。


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そのような条件でも、コートハウスであれば、中庭に向かって大きな開口部を設けることで、風通しや日当たりを確保することができるのです。気候のいい時期であれば、窓を開けっ放しにしておくこともできます。また、洗濯物も通りを歩いている人から見られる心配がないのも、高ポイントですね。

 

 

<コートハウスのメリット3>
家族のコミュニケーションの場になる!

中庭の魅力のひとつは、部屋からのアクセスの良さが挙げられます。外に向かって設けたデッキなどは、リビングからのみ出られるという場合も多いですが、中庭の場合は、家のいろいろな場所から出ることができるのです。中庭で遊ぶお子さんを室内から見守ったり、逆に中庭からは室内にいる家族の気配を感じることもできます。


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お天気のいい日には、普段は室内ですることを、あえて外に出てやってみるのもおすすめです。風を感じながらお茶を飲んだり、音楽を聴いたり、読書をしたり、お昼寝をしたりと、いつもと違った楽しみ方が発見できるかもしれません。

 

 

<コートハウスのメリット4>
建物や壁に囲まれて、防犯面でも安心できる!

外側に向けては開口部が少なく、内側の中庭に面して大きな開口部のあるコートハウスは、防犯面でも優れています。庭やデッキ、そしてリビングルームが通りに面していると、どうしても外から見られてしまうので、外との繋がりが出てしまいます。一方で、外から侵入できる窓が少ない場合は、ターゲットにされにくい家と言えそうです。


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また、洗濯物なども外から見えないので、盗難などの犯罪に巻き込まれるリスクも少なくなります。開口部が少ないシンプルな外観にすれば、生活感があまり感じないので、洗練された印象の家にすることもできます。

 

 

<コートハウスのメリット5>
開口部の少ない、シンプル外観が実現できる!

コートハウスは家の内側に開口部を設けることができるので、外壁は開口部をあまり作らないというお宅も多いようです。都市部の住宅密集地であればなおさら、隣の住宅との関係は気になるところ。また、通りからの視線も気になりますね。


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コートハウスの家であれば、外観はシンプルなデザインにすることもできます。シンプルな家を建てたいのであれば、コートハウスの間取りを採用するのも手です。

 

 

メリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。メリットとデメリットを踏まえたうえで、間取りを考えるようにしましょう。

・建物の形が複雑になり、建築費用がかかってしまう

・中庭を設ける分、居住面積が狭くなってしまう

・窓がたくさんあることで、断熱性が下がってしまう

・中庭も掃除や手入れ、メンテナンスが必要になる

・外に向かっての開放感がないので、景色はあまり楽しめない

 

敷地の特徴に合わせて選びたい、コートハウスの間取り

コートハウスは、その家その家に合った間取りにする必要があります。まずは、コートハウスにはどんな間取りのタイプがあるのかを知っておきましょう。敷地の形や周囲の環境、また中庭をどのように使いたいかによって選んでみるのもいいでしょう。

 

<ロの字型間取り>

ロの字型のコートハウスは、中庭を中心にして、ぐるりと建物が囲む間取りです。中庭が完全に建物に囲まれているため、外の通りから完全に視線を遮断することができ、プラバシーがしっかり守られるメリットがあります。また、中庭の四方すべてが居住スペースと接しているため、室内に陽光を取り入れることも可能ですし、それぞれの部屋から中庭に自由にアクセスすることもできます。


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ただし、ロの字型はある程度の敷地面積が必要になるため、狭小住宅などではなかなか取り入れられない間取りです。また、完全に壁で囲まれていると、湿気がたまりやすいというデメリットもあります。

 

 

<コの字型の間取り>

コの字型のコートハウスは、3つの面が建物に囲まれている間取りです。建物に囲まれている面が多いため、外からの視線はしっかり遮断しつつも、ロの字型の間取りよりも風通しや陽光を取り入れやすいなどのメリットがあります。


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コの字型の場合は、建物の壁や角が多くなり、建物の形が複雑になりがちに。そうなると、建築費用が高くなってしまう傾向があります。

 

 

<L字型の間取り>

L字型のコートハウスは、建物の一つの角部分が中庭になっていて、2面が建物、残りの2面は壁で囲まれた間取りです。建物に囲まれている部分がほかの間取りに比べて少ないため、外からの視線は注意する必要がありますが、その分、開放感は抜群。風通しや日当たりを重視するのであれば、L字型を選ぶのもおすすめです。また、建築費用も比較的抑えることも可能です。


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L字型のコートハウスの場合は、周囲から中庭が丸見えにならないように、間取りなどを工夫する必要があります。また、壁をある程度高くしないと、中庭に向かって大きな開口を設けるのが難しくなる場合があります。

 

 

コートハウスは、限られた敷地内でも、中庭に面した大開口から光と風を室内に取り入れることができます。また、建物や壁で囲まれていることで、プライバシーや防犯面でもメリットが大きいでしょう。コートハウスでどんな間取りにするかは、設計事務所や住宅メーカーさんと相談しながら決めるのがおすすめ。できれば、コートハウスや中庭の建築実績が多い会社を選ぶと安心ですね。

 

文/内田あり

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著者情報

秋 慎一郎

秋 慎一郎 監修:一級建築士 秋慎一郎 /L・DESIGN建築設計事務所

「プライバシーの守られた開放的な空間」
「季節の移ろいを感じられる心地良い住まい」
をコンセプトにして、設計活動をしています。
コートハウス(中庭型住宅)の設計を多く手掛け、
「光」や「風」を考慮した、家族と穏やかに過ごせる「住まい」を提案しています。