平屋は、ワンフロアに生活スペースが集中していることで、生活動線や家事動線が非常にコンパクトになり、暮らしやすいというメリットを持ちます。その一方で、リビングなど居住スペースがすべて一階になってしまうので、通りや隣家など外からの目線が届ききやすく、プライバシーを確保しにくいという面も。せっかくの家づくりであれば、プライバシーも確保しつつ、平屋のよさを最大限に活かした家で暮らしたいものですよね。そこで注目すべきは、中庭のある平屋です。
そこで今回は、平屋のメリットやデメリットに加えて、中庭がついている場合のメリットなどもご紹介します。
コンパクトに暮らすことができる、平屋とは
シニア世代の夫婦にはもちろん、最近では若いファミリー層にも人気が高まっているのが、平屋です。これまでは、平屋の建売住宅というのは物件数も少なく、注文住宅で建築されることがほとんどでしたが、最近では平屋だけの建売住宅が集まった分譲地なども見られるようになりました。
平屋のデザイン次第では、シンプルな箱のようにインパクトのあるフォルムにすることもでき、かえって個性的に見せることも。さらに、生活動線がコンパクトで効率がいいなどのメリットでも注目されています。敷地にある程度の広さが必要なため、都心部で建築するのはなかなか難しいですが、あえて郊外に広めの土地を探して、自然に近い場所に平屋を建てる若い世代のファミリーも増えているのです。
平屋にすることの魅力のひとつが、ワンフロアに家族みんながいることで、お互いの気配をいつでも感じていられることと言えます。これは、子育て世代の家族にとっては、大きなメリットにも。また、これから小さなお子さんを育てていくご家族であれば、家の中に階段がないことで、お子さんが階段から落ちるなどの事故を未然に防ぐことができるのです。また、掃除や洗濯まわりの家事をする際に、1階と2階を行き来する必要がないので、シニア世代に取っても暮らしすく、また、子育て世代には小さなお子さんを見守りやすいというメリットがあります。
平屋の家のメリットとは
まずは、平屋にすることでのメリットをご紹介します。家族のライフスタイルに合っているかどうか、検討してみましょう。
＜平屋のメリット その①＞
生活動線や家事動線がコンパクト
平屋は、生活するためのスペースがすべて１階で完結するので、生活動線がコンパクトで暮らしやすいというメリットがあります。とくに、1階と２階を行き来する動線がないので、時短にもなり、安全面でも安心です。
＜平屋のメリット その②＞
階段がないので、バリアフリー住宅に
階段がない家を求めて、シニアになってからマンションに住み替えるというご家族もいらっしゃいます。それは、年齢を重ねると、階段での移動が体力的にも安全面からも難しくなるからです。
しかし平屋であれば、最初からワンフロアで暮らすことができれば、途中で住まいを変える必要がありませんし、マンションのように上下階の住民に気を遣うことなく暮らすことができます。
＜平屋のメリット その③＞
１階リビングでも天井高にすることができる
平屋の場合は2階にフロアがないため、天井の高さを比較的自由に設定することができます。広さが限られる住宅であれば、リビングなどに開放感を出して暮らすのがおすすめです。そこで天井の高さを出すことで、縦方向へ空間が伸び、より広さが感じられます。また天井が高いことで、ロフトスペースなどを設けることもでき、収納場所を確保することも可能です。
＜平屋のメリット その④＞
地震や台風などの災害強い
平屋は２階建てや３階建ての住宅に比べて、建物の重心が低いことから、地震などの揺れに対して安定性があり耐震性が優れています。さらに、建物の形の問題だけでなく、間取りがシンプルなところも地震に強い理由のひとつになります。さらに、玄関を開ければすぐに外に出られるので、避難がしやすいという点も見逃せません。
台風などで強風が吹いた時にも、高さがないため、強風や風圧の影響を受けにくいと言えます。また、全体の重量が軽量のため、倒壊しにくいというメリットもあるのです。
＜平屋のメリット その⑤＞
メンテナンス費用を安く抑えることができる
新築時には見逃されがちですが、将来的なメンテナンス費のことも頭に入れておきましょう。定期的に必要なのが外壁と屋根の塗装ですが、2階建てや3階建ての住宅の場合は、足場を組むなどかなり大掛かりな作業になります。その点、平屋の場合は、そもそも建物の高さがないので、足場を組む規模も違ってきます。さらに、外壁面積も少ないので、費用面でも安く抑えることができますし、メンテナンスにかかる日数なども違ってくるのです。
【中庭のある平屋の場合のメリットは？】
中庭があることで、建物と通りとの間に空間があり、その分、外からの視線を気にせずに過ごすことができます。この中庭が高めの塀や建物で囲まれている場合は、よりプライベートな空間として中庭を使うことができますし、室内にいても外の視線を全く気にせずに過ごすことができます。
さらに、外からの視線を気にせずに暮らすことができるので、中庭に面した窓を大開口にすることも可能に。そうすると、斜め上からの陽光がたっぷり入りこみ、室内で気持ちよく快適に過ごすことができます。
平屋のデメリットとは
メリットがある一方で、デメリットもあります。自分たちの暮らしにどう影響があるのか、しっかり検討してみましょう。
＜平屋のデメリットその①＞
ある程度の広さがある敷地が必要になる
平屋は、リビング・ダイニング・キッチン・寝室・個室・水回りスペースなどをすべて１階に作るため、たとえば、２階建てと同じぐらいの床面積にしたい場合は、それだけの土地の広さが必要に。広い土地が必要になるので、必然的に土地代が高くなりますし、それだけ、固定資産税も高くなってしまいます。ある程度の広さの土地を見つけるため、もしくは予算内で建築するためには、郊外などでの土地探しを検討してみるのもおすすめです。
＜平屋のデメリットその②＞
周囲の建物からの視線が気になってしまう
一般的な住宅地に平屋を建てる場合、まわりは２階建ての建物に囲まれることが多いもの。平屋は２階部分にリビングを配置する選択肢がないので、リビングは１階になり、どうしても通りから近い場所になってしまうことも多いです。その場合に、周囲からの視線をどのように遮りながら、間取りを考えるかが重要になります。
そこで、間取りに中庭を設けることで、周囲からの視線を上手に遮ることができるのです。
＜平屋のデメリットその③＞
平屋は台風時などの浸水に弱い
平屋は地震や台風などでの強風に強い一方で、2階部分がないため、豪雨などによる浸水に弱いというデメリットがあります。浸水のおそれがある場合、2階や3階部分に避難する垂直避難をする方が安全という状況もありますが、平屋ではそれができないのです。
そこで平屋を検討する場合は、ハザードマップを確認して、その土地が浸水しやすいかしにくいかしっかり確認を。さらに、地盤の高さを上げるなどの工夫をすることもできます。
＜平屋のデメリットその④＞
防犯面での対策が必要になる
平屋はすべての居住スペースが１階にあるため、防犯面ではしっかりとした対策が必要になります。とくに、「できるだけ自然光を室内に取り込みたい」「換気のために窓を多めに設けたい」などの要望があると、開口部が大きくなったり、窓の数が多くなるので、それだけ空き巣の被害に遭う可能性が高くなるのです。
そこで、できるだけ侵入できない窓を上手に取り入れることが大切に。FIX窓や横すべり窓など、大きく開口できない窓にするか、ハイサイドライトやトップライトなど開かない窓を取り入れることで、犯罪に遭わないための対策をすることができます。
【中庭のある平屋の場合のデメリットは？】
間取りにある程度の広さの中庭を平屋に設けるためには、中庭のない平屋よりも、より広い敷地が必要になります。それにともなって、土地代や建築費が高くなってしまうことも。
また、中庭を作るということは、居住スペースがその分減ってしまう可能性もあるので、どちらを優先すべきかをプランニングの段階でしっかりと検討する必要があります。
中庭のある平屋にはどんな間取りがあるの？
中庭を設けた平屋には、どんな間取りの種類があるでしょうか。一つずつ、特徴についてご紹介します。
中庭に開放感を求めるなら＜L字型＞
L字型をした中庭のある平屋は、2方向が建物に接していて、残りの2方向は外に接しています。そのため、外からの日差しを取り込みやすく、開放感を得ることができます。L字型は、変形地や比較的コンパクトな土地でも建てやすい間取りと言えます。
ただし、外とのつながりがある分、外からの目線や防犯面では注意が必要です。
バランス重視なら＜コの字型＞
中庭の一部分だけが外に接していて、3方向が建物に囲まれている間取りです。L字型よりもプライバシーは確保でき、ロの字型よりも陽光を取り入れやすく、開放感を得られる空間に。どちらのよさもある、バランス重視型の間取りです。
外側に接している部分に高めの壁を設ければ、プライベートは確保しつつ、陽光も取り入れやすい暮らしが実現できます。
完全プライベート空間になる＜ロの字型＞
中庭の４方向をすべて建物で囲んだ、完全プライベートな中庭が実現できるのが、ロの字型の間取りです。この間取りの場合、外からは侵入することはできないので、防犯面でも安心と言えます。ロの字型の中庭であれば、家の中と同じような感覚で、ゆっくりとくつろぐことも。このような間取りにすることで、洗面所やバスルームなどプラベートな空間も中庭に面するようにすれば、窓を開けて使用することもできます。
ただし、ロの字型では間取りが複雑になり、建築費がかさんでしまうことがあります。
平屋に興味があり、さらに、ある程度広さのある土地が用意できるようであれば、中庭のある平屋を検討してみてはいかがでしょうか。中庭があることで、プライバシーを確保しやすかったり、中庭に向かって大きな窓を設けることができるなど、さまざまなメリットがあります。
一方で、建築費が高くなってしまったり、中庭が確保できるほどの敷地面積が必要になるので、予算や周囲の立地、家族のライフスタイルなどと合わせて、検討してみてください。
