家事動線を意識した、間取りづくりの4つのコツ

ウィークデイの朝は、毎日ドタバタで大忙し。とくに、共働きのご家族にとっては、身支度や家事のルーティンはできるだけ短時間で終わらせたいもの。それを実現させるためのキーワードとなるのが「家事動線」や「生活動線」です。忙しい毎日の中でも快適に暮らすためには、これらの“動線”を意識した間取りを取り入れるといいでしょう。今回は、家事動線や生活動線を重視した、間取りづくりのコツを空間別にご紹介します。

 

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「家事動線」や「生活動線」を考えるということ

二階リビングの写真
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「家事動線」とは、家の中で調理や洗濯、掃除などの家事を行う際に、人の一連の動きを表す線のこと。一方で「生活動線」とは、朝起きて顔を洗い、身支度をして食事をし、家を出るといった、生活する上での一連の動きを表した線です。

理想的な間取りを考えるのであれば、この家事動線や生活動線といった、家族の動線計画を立てる必要があります。そのほか、来客が頻繁に訪れるご家庭では、家族のプライベート空間に来客が通らないような「来客動線」を考えるのもいいでしょう。もし、この動線をまったく意識せずに間取りを考えてしまうと、人が無駄に行ったり来たりすることになり、時間と労力ばかりがかかってしまいます。

実際にこれらの動線を考える場合、今現在の家で、どんな動きや順序で家事や身支度などをしているのかを想像してみます。たとえば、家族の朝食を作りながら複数回洗濯機をまわし、その間に子供たちの支度や食事の面倒をみる……。そうなると、キッチンと洗濯機のある洗面所を何度も行き来することになり、それだけで無駄な動きが増えてしまうのです。そこで、キッチンに洗濯機を置いたり、洗面所を隣り合わせにした間取りにすることで、よりスムーズに同時進行での家事が可能になります。

また、共働き夫婦であれば、朝の家事はなるべく時短化したいもの。テーブルとキッチンをつなげたり、調理台になるカウンターを設けたりすると、配膳や後片付けの動線をなるべくコンパクトにすることもできます。

はじめての家づくりでは、どうしてもデザインの良さ、家族構成にあった間取りにすることが優先になってしまいます。しかし実際に暮らしてみると、デザインのよさももちろん重要ではありますが、意外に大切になるのがこれらの動線です。このように、家事動線や生活動線を意識した間取りづくりを重視すれば、はじめての家づくりでも快適な暮らしが実現できます。

 

 

 

<動線を意識した間取りづくり① キッチン>
水回りを集約し、キッチンまわりはコンパクトに

キッチンとダイニングテーブル
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キッチンとテーブルを横につなげることで、配膳や後片付けの動線が非常にコンパクトになります。調理をして、調理台で盛り付けをし、料理をそのまま横のテーブルにスライドさせるだけ。食事の後も、そのままスライドさせて片付けができます。キッチンの反対側からも作業ができるので、複数人で料理をするときにも便利な間取りです。

さらに、キッチンの奥には掃き出し窓からテラスに出られるようになっているので、家事の合間に洗濯物を干すこともできますし、キッチンで出たゴミ類などの置き場としても活用できるでしょう。

 

 

リビングルームの写真
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こちらは、キッチンを中心に、洗面所やバスルームなどの水まわりを集約させた間取り。朝の家事タイムには、調理や片付けをしながら洗濯機を回したり、隙間時間でお風呂掃除をすることもできます。帰宅後は、夕食の支度をしながら、子どもたちのお風呂の世話をしたり、ダイニングで宿題を見守ったり、洗濯物を畳むなどの一連の家事を、キッチンスペース周辺ですべて行うことができます。

こちらのお宅のように平屋建ての場合は、水回りを集約することのメリットも多くあります。たとえば、水回りは比較的生活音が大きくなりがちな場所なので、とくに平屋住宅の場合は一箇所に集約するのがベスト。夜に洗濯物を回したり、食洗機を回すお宅も多いと思いますが、そのような生活音が気にならないような間取りを考えることも大切です。

 

 

 

<動線を意識した間取りづくり② 洗面>
洗濯がらみの家事は、洗面所の中で完結する

洗濯物干しがある洗面所
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家事動線を考えて、キッチンに洗濯機を置いたり、キッチンとテラスとつなげるという間取りも人気ですが、リビングやダイニング、キッチンに生活感が出てしまうのが気になる……という人も多いでしょう。その場合は、洗面所に洗濯家事の動線を持ってくることもできます。洗濯機の置き場としては、洗面所がもっともメジャーですし、洗濯物が出る場所でもありますよね。

家事動線を考えた場合に、洗面所とテラスをつなげると、洗濯物を干すのがスムーズになります。また、こちらのお宅のように広い作業台を設ければ、乾いた洗濯物をここで畳むこともできます。さらに、背面に収納棚を設けて、そのまま家族の衣服などを収納すると、洗濯家事の動線がかなりコンパクトに済みますね。

すべての衣服を洗面所に置くのは難しいでしょうが、下着やパジャマ類などは洗面所に置けるようなデザインにしておくのがおすすめです。

 

 

中庭に面した洗面所
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こちらは、家の中央に中庭がある間取りの家。洗面所を中庭のバルコニーに面した間取りにしたことで、この家らしい家事動線や生活動線が考えられます。

まずは、洗濯物を干す際にもスムーズな移動ができます。また、洗濯物を干し終わったら、各部屋に衣服を配るのもなかなか面倒な家事ですが、中庭を中心に部屋が広がっている間取りなら、衣服を配るのも簡単です。

また、中庭でお子さんがプール遊びをしたり、ヨガやストレッチをして汗をかいた後は、そのまま洗面所やバスルームに直行できるのも魅力。長風呂で火照った体を、バルコニーでクールダウンすることもできますね

 

 

 

<動線を意識した間取りづくり③ 収納>
収納は、使って戻す動作を意識するのがコツ

収納の写真
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生活動線を考える際にカギになるのが、収納や身支度をする場所です。寝室にウィークインクローゼットを設けたり、洗面所に下着類などを置ける収納を設置するご家庭も多いものです。収納場所は、自分のライフスタイルに合わせて考てみるといいでしょう。

たとえば、夫婦が同じ時間に起きるのであれば、寝室で身支度をするのでも問題ありませんが、起床時間がずれているのであれば、こちらのお宅のようなクローゼットの一室を設けるのもアイデアのひとつ。寝ている家族に気兼ねなく、身支度をすることができます。さらに、このように家族分のクローゼットを一箇所に集約することで、洗濯後の衣服を各部屋に配る手間も省けます。家族の人数が多かったり、上下階の行き来をしなければいけない場合には、このような間取りを検討してみるのもいいでしょう。

 

 

個室の入り口
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お子さんが、通学などに使う手提げカバンや帽子、習い事のバッグなどが家中に散らばってしまうと、それを片付けたり探したりといった手間が出てしまいます。

そこでこちらのお宅のように、子ども部屋の入り口に、ちょっとした造作収納を設置。毎日使う物を帰宅後ここに置いておけば、朝出かける際に「あれがない、これがない!」なんてこともなくなります。これによって、無駄な動線はなくなります。

また、洗濯物やお子さんの部屋に置きたい物を、ここにサッと置いておくという活用方法もおすすめです。室内まで持っていくのは大変ですが、ここに置いておけば、自分のものは自分で片付ける習慣ができるでしょう。

 

 

<動線を意識した間取りづくり④ 玄関>
玄関の出入りをする際の、生活動線を考える

スケルトン階段のある玄関ホール
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こちらの玄関には、出かける前の一連の動きがここで済ませられるような工夫がされています。玄関には大きめのシューズクロークが設けられているので、厚手の上着や帽子などを収納できるようになっています。帰ってきたら室内まで持ち込まずに上着や小物類を収納しておき、出かける前に上着を玄関で着て出発できてスムーズ。また、大きな全身鏡があれば、身だしなみを整えてから出かけられるのです。

 

土間玄関
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こちらの玄関は、広めの土間スペースと一体化したデザインに。ベビーカーや自転車などで帰ってきたら、ここに置いて室内へ。出かける際もここで荷物を準備することもできますし、自転車のメンテナンスも行えます。屋外の玄関周辺に自転車を停めたり、ベビーカーを玄関に入れて畳んで収納するなど、お子さんがいると何かと面倒な作業も、このような土間スペースがあることでスムーズに行うことができます。

また、ポストを壁に一体化させるデザインを採用することで、家の中から郵便や新聞が受け取れます。わざわざ外に出てポストの中身を持ってくる動きが、このデザインひとつで短縮されるのです。

 

 

 

間取りやデザインを工夫することで、家事動線や生活動線がコンパクトになり、無駄な動きがなくなります。そうすることで、家事や身支度の時短につながり、その分、家族とのコミュニケーションの時間や自分のためのゆとりの時間を多く持つことができるでしょう。心豊かに暮らすためにも、動線を考慮した間取りづくりをするのがおすすめなのです。

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著者情報

秋 慎一郎

秋 慎一郎 監修:一級建築士 秋慎一郎 /L・DESIGN建築設計事務所

「プライバシーの守られた開放的な空間」
「季節の移ろいを感じられる心地良い住まい」
をコンセプトにして、設計活動をしています。
コートハウス(中庭型住宅)の設計を多く手掛け、
「光」や「風」を考慮した、家族と穏やかに過ごせる「住まい」を提案しています。