家づくりにおいて、インテリアや間取りにこだわることで、心豊かな暮らしに近づくことができますが、もうひとつ重視したいのが「動線」です。この動線を意識してプランニングすることで、家事をしたり、普段の生活をするうえで、室内での動きがスムーズになるのです。
では実際に、「動線のいい家」にするためには、どんなところに気をつけて間取りを考えればいいのでしょうか。今回は、家事動線と帰宅動線に優れた間取りを作るための、ポイントや実例をご紹介します。
家事動線や帰宅動線など、家づくりの際の動線とは?
動線とは、何か目的の動作をするときに、人がどのように動くかを示した経路を指します。家づくりの際に「動線」と使う場合は、家事動線や生活動線、帰宅動線、来客動線などという言葉が使われます。まずは、それぞれがどのような動線なのかをご紹介します。
【家事動線】
洗濯や掃除、調理、片付けなどの「家事」を行うために、人が動く経路を指します。とくに「洗濯するための家事動線」に関しては、洗濯機を回して洗濯物を干し、それを取り込んでクローゼットにしまうというように、それぞれの動きをする場所が家の中に点在しているのが特徴。この動線をいかにコンパクトにするかで、家事の時短にもなり、洗濯の家事動線をよくするポイントになります。
【生活動線】
起床してから就寝までに、人が動く経路を指します。たとえば朝の生活動線であれば、朝起きて寝室から顔を洗いに洗面所に移動し、トイレ、そしてキッチンへ行く動きを。夜の生活動線であれば、夜にお風呂に入ってパジャマに着替え、就寝するまでの動きのことをいいます。
とくに、洗面所からクローゼット、寝室までの動線がいいと、家族の朝と夜の支度がスムーズになります。
【帰宅動線】
家に帰ってきてからの、人が動く経路を指します。たとえば、帰宅して玄関から家に入り、洗面所で手を洗ったりお風呂に入るなどの支度をして、リビングに行くまでの動線がスムーズだと、家に帰ってすぐにひと休みできたり、食事の支度の取り掛かることができます。その動線上に必要な設備やモノが揃っていることで無駄な動きがなくなり、モノが散らかることを防ぐこともできます。
【来客動線】
家に来客があった場合の、お客さまが動く経路のことを指します。間取りを考えるうえで優先順位は低いですが、来客が多いご家庭の場合は、家族だけではなく、ゲストの動線も考えておくと安心です。たとえば、リビングのすぐ近くにトイレや小さな洗面所を設けるなどすると、来客が動くパブリックゾーンと、家族がいるプライベートゾーンをある程度分けることができます。
お子さんが成長すると、このパブリックゾーンとプライベートゾーンがしっかりと区切られていることで、お子さんに気兼ねなく来客を招くことができて便利です。
動線を考える際の注意点とポイントとは
家事動線、生活動線、帰宅動線、来客動線など、動線にはいくつかの種類がありますが、すべてが理想通りの動線にするのは、なかなか難しいものです。そこで、これだけは譲れないという優先順位を決めて、それを設計士さんやプランナーさんに伝えるのがおすすめです。その際に、家族がどんな動線で動くのかをイメージして、どんな配置が理想的なのかを伝えるのがスムーズです。
また、動線は必ずしも、コンパクトであればいいというわけではありません。無理のない移動距離であることと、無駄な動きが少ないこと、また同時に行う家事があるかどうかなど、その家族のライフスタイルに合っているかが重要なのです。
心豊かな暮らし、質のよい暮らしを求めるのであれば、この「動線」をしっかりと考えながらプランニングすることが大切です。
家事動線を間取りに取り入れる際の実例
ここでは、家事動線が優れた間取りにするためのポイントをご紹介します。SUHACOの実例で見ていきましょう。
<家事動線のよい間取り例 その①>
洗濯する場所とデッキやテラスを隣り合わせに
こちらの洗面所は、中庭のデッキに面した明るく清潔感のあるスペース。ここで洗濯をして、そのままデッキに出て洗濯物を干すことができる家事動線は、とくに、洗濯物の量が多いご家庭におすすめの間取り。さらに、雨が急に降ってきてしまっても、洗面所内にランドリースペースを設けていることで、サッと室内に取り込むことができます。
<家事動線のよい間取り例 その②>
洗濯をする場所の近くに、収納スペースを配置する
洗面所を中心とした洗濯動線にする場合は、テラスやデッキなどと隣接させるのと同時に、取り込んだ洗濯物を収納するスペースも近くに配置させるのがベストです。
たとえば、洗面所の近くにファミリークローゼットを配置するのもいいですし、洗面所の中に下着類やパジャマ、タオル類などを収納できるスペースを確保できると、しまうのも取り出すのも便利です。
<家事動線のよい間取り例 その③>
キッチンをぐるりと回れる回廊型にする
調理の動線を考える場合には、キッチンでどのような動きをするかがポイントです。たとえばこちらのお宅のキッチンは、壁側にI型のキッチンを配置して、リビング側に広々とした作業台を造作。調理器具は壁側にまとめることで、調理作業は横の動きのみでコンパクトに。料理ができあがったら、今度は作業台の方に移動して、お皿を並べて盛り付けを。このように、調理と盛り付けのスペースを分けることで、キッチンの中での行ったり来たりの動きが最小限になります。
また、キッチンのデザインやスペースの広さにもよりますが、キッチンを回廊型にすることで、移動距離がコンパクトになります。とくに、複数人でキッチンを使ったり、家族が手伝いをする場合などは、どちらからも入って出られるような回廊型が断然便利です。
<家事動線のよい間取り例 その④>
キッチンのすぐ脇にパントリーを設ける
調理をするときには、食材を取りに行ったりという動作が必要になります。そのときに、ストック類も含めてすべてが1箇所にまとまっていると、キッチンとパントリーの行き来だけで済むのです。このようにキッチン脇にパントリーを設けていると、調理の家事動線が非常にコンパクトになります。
<家事動線のよい間取り例 その⑤>
キッチンと洗面所を隣接させると、調理と洗濯が同時に
こちらのお宅は、キッチンの左手奥に洗面所とバスルームがあります。このように、家事の場所がひとまとまりになっていることで、調理や後片付けをしながら洗濯機を回したり、バスルームの掃除をするなど、家事を同時進行することができます。さらに洗面所からは、リビングにも面したベランダに出ることができるので、洗濯物を干すのに最短の動線で行うことができるのです。
帰宅動線を間取りに取り入れる際の実例
次は、帰宅動線が優れた間取りにするためのポイントをご紹介します。SUHACOの実例で見ていきましょう。
<帰宅動線のよい間取り例 その①>
玄関収納の一部は、上着などをかけられるデザインにする
こちらのお宅の玄関には、天井までたっぷり収納できるシューズクロークが備わっていて、靴はもちろん、秋冬のコートやジャケットなどをかけておくことができるようになっています。さらに、出かける前にはここで上着を来て、壁に取り付けられている鏡で身だしなみのチェックもできるので、朝の生活動線もスムーズになります。
<帰宅動線のよい間取り例 その②>
玄関まわりやすぐ近くに、洗面所を設置する
家に帰ってきたらすぐに、手を洗ってうがいをしたいという方も。小さなお子さんや高齢者のいるご家庭であれば、感染症対策もよりしっかりしたいところです。ただし、玄関から洗面所までの距離があると、お子さんがあちこち触ったり、そもそも手を洗うのを忘れてしまったり…。
そこでこちらのお宅のように、玄関スペースやすぐ近くに洗面所を設けることで、スムーズに手洗いうがいができます。帰宅後はすぐにお風呂に入りたいというご家族がいれば、玄関から洗面所までの動線もコンパクトであると、さらに便利です。
また、玄関先の洗面所は、来客動線を考えるうえでも取り入れたいアイデアです。
<帰宅動線のよい間取り例 その③>
洗面所とファミリークローゼットの動線をスムーズに
お風呂に入ってから着替えをするのに、洗面所とクローゼットや寝室などが離れていると、帰宅動線や生活動線がいい家とは言えません。同じフロアで、さらになるべく近くに配置されているととても便利です。とくにお子さんが小さい時期は、親子で一緒に着替えができるファミリークローゼットを洗面所の近くに設けると、手間も時間も省けるのでおすすめです。
このファミリークローゼットは、家事動線においても便利。家族分の洗濯物を各部屋に片付けるのは大変ですが、ファミリークローゼットにまとまっていれば、一気に片付けることができます。
家事動線や帰宅動線などは、その家に住む家族のライフスタイルによっても違ってくるもの。注文住宅での家づくりであれば、家族に合わせて考えられた動線にしたり、配置や間取りを工夫することができるので、より快適な家づくりができるのです。
まずは、自分の家族にとって何を優先すべきかを検討して、設計士さんやプランナーさんと相談してみましょう。SUHACOの実例を参考にして、「こんな間取りを取り入れたい」などと伝えてみるのもスムーズです。